癒しの祈り


4月のある日、突然右耳の奥で風が吹くような音がしはじめ
それが一向におさまらないので
これは多分あれだなと思い、4日後に耳鼻科へ行った
検査の結果は、やはり『突発性難聴』だった

気がついたら一刻も早く治療しないと手遅れになると聞いていたため
いつもだったらこのくらいの症状では絶対行かないなあと思える程度でも出かけたのだが
「はやくて良かった」と病院でも言われた
発病して一週間以内であれば治癒率もかなり高いが
一ヶ月も放置しておくとほとんど聴力が戻らなくなるという

それでも適切な治療を行っても完治するのは患者のうちおよそ三分の一
更に三分の一は改善はするが難聴・耳鳴りなどの後遺症が残り
残りの三分の一は改善しないとも言われていて
一時的に完治したようでも、再発するケースも多いらしい

で、わたしの場合
その時は一週間ほどの薬の服用で一応完治とされたが
先週からまた症状が出てきて再び耳鼻科のお世話になっている
幸い難聴の程度は軽くて
検査でもしなくては自分では聞こえが悪いなど全く気づかない程度ながら
耳の奥で風が吹くような耳鳴りがすると
ああわたしはやっぱり突発性難聴なのねえと実感するのだった

病気には何か原因があるはずだけど
現実にはそれがはっきりしていない病気も多くて
突発性難聴もいまだに発症原因は「過労」と「ストレス」くらいしかあげられていない
しかしまあわたしのような生活でこの原因では申し訳ない気もするので
多分「更年期障害」みたいなものもきっと関係しているのだろうと個人的には推測している

病気というのは
現在自分に起こっている症状に対する不安よりも
今後この病気がどのように進み
一体自分がどうなってしまうのかという「想像上の不安」の方が大きくて
かなりの部分「取り越し苦労」があるようだ
病気の8割は心意性とも言われるほど、病気と心は直結していて
たとえ病気そのものは完治していても
不安が残れば本人には治ったとは思えないものだ
実際問題、どこも悪くないのに
ただ不安にとりつかれて病院のハシゴをしている人も少なくない

病気が「治る」ことと「癒される」こととは違っていて
仮に病気は完治しなくても不安から開放されれば
それは「癒された」状態なのだと思う
だからわたしは今回のことについても完治することにはこだわらず
ただ癒されたいと願っている

もう3年位前になるだろうか
ある女性からメールが来て
目の病で近いうちに失明するだろうと宣告されているとの内容が記されてあった
その人もバラを育てる人で、バラ関係から検索でうちのサイトに来られたのだが
今はまだ見えているこの花もやがて見えなくなるかと思うとやりきれない
そんな気持ちでうちのサイトを訪問されて
その時このサイトに心の癒しがあったという言葉に
わたし自身も励まされる思いがしたものだ
あの方の目はまだ見えていて
今年のバラを楽しむことが出来ただろうか
絶望のあまり、せっかく見えている間の楽しみさえも放棄してしまうような
そんな悲しい状況でなければいいのだが・・・

サイト開設以来、今までたくさんの方々からメールをいただいてきたが
わたしは通常初対面の人の顔と名前が覚えられない性質でありながら
メールをもらった人の事は多分みんな覚えている
その中で、多くの方は色んな意味での「癒し」を求めていて
言ってみれば「真実」と「勢い」だけで構成されたこの単純サイトに
癒しの祈りを感じてくださっていることが嬉しかった

たくさんの持病を抱える夫は
以前ある病院で医師から
「神様は治してくれませんかね」と言われたことがある
また、一方では
信仰者の立場にある人から
「自分の病気の話など公にしない方がいい」と言われたこともある
この両者に共通する感覚では
病気が治ること(あるいは病気がないこと)こそが重要で
そうならないのは神様がいないからか
あるいは不信心だからか
はたまた何かのバチなのか
まあ、一般的に宗教に対する感覚というのはそういうものなのかもしれないが
少なくともキリスト教はそうではないはずだ
でなければ、わたしたちはこうして今までやってこれなかったし
「真実」を書くことは単に恥さらしでしかないことになる

ところが
実際には「真実」から「癒し」が生まれてきた
わたしが「真実」を書くのは、決して同情を得るためではなく
反対に、向こう側にいる人々を励ましたいのだ
それはわたしがすでに励まされているからにほかならない

種蒔きして育てているゲラニウムに
今日はじめての花が咲いた
geranium2008630-2a.jpg

ほんのわずかの間しか咲いていないこの花にも
わたしを楽しませ、励ます力がある

毎日のように何かが咲き、何かが枯れていくのを見ながら
生きている間の役目は
人の思いを超えたところで
それぞれ色々あるのだろうなあと思う



(2008.6.30.記)


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