コンプレックスと向き合う 9

<自己愛性人格障害の分析>


前回のような『愛されない条件〜自己中心と傲慢』といった話をした場合
それを聞いた後
「わたしもそういう人間でしょうか?」と心配して真面目に尋ねてくるのは
まずほとんどがこの条件に当てはまらない人だ
こういう風に自分を責めている時点ですでに条件からはずれている
自己中心の人は絶対に自分を責めることはないので
そのような話を聞いても自分に当てはめることはしないし
ましてや反省などありえない
だから、自己中心を人の説得で何とかしようとするのはまず不可能であろう

では、そういうどうしようもないことをこうしてぐだぐだ書いている理由は何かといえば
ひとつは、人は誰でも自分に関わる人を自己中心に育ててしまう可能性があるという事実の認識
そして、もうひとつは、自己中心な人との関わり方を知ることの重要性にある

というのも、前述のように
「わたしもそういう自己中心な人間でしょうか?」と、まず自分を責めるタイプの人は
本物の自己中心の人にいいように利用され、振り回され
その人生をずたずたにされながらも
なお、相手ではなく自分に落ち度があると思い込んでしまう危険性があるからだ
また、正義感や愛にあふれた良い子タイプの人は
「わたしがついていなければこの人はダメになってしまう」と思い込み
どこまでも自分が犠牲になろうとするケースもある
何にしてもこれは人の力で何とかなる世界ではないという事実を認識するのはとても大切だ

究極の自己中心の姿『自己愛性人格障害』について
参考サイト(1) 参考サイト(2)から以下抜粋


『自己愛性人格障害』


英語ではNarcissistic Personality Disorderです。そう、つまりナルシストのことです。
その原因は母親の過保護と父親の不在です。
そのおかげでいつも自分は特別なものだと感じています。
そのため、誰かに自分のことを非難されるのをとても耐えることができません。
自分は特別な人間だと感じ、様々な対人関係の障害がでてくるのが特徴です。
まわりの人間は自分を敬うのが当然と感じ、他人への思いやりに欠けます。
究極の自己中心的な人間、裸の王様がこの自己愛性人格障害です。
この自己愛性人格障害には、大きく二つのタイプが存在すると言われています。

ひとつは無自覚タイプです。これは日本に多いタイプで、まさに自己中心の塊です。
多くは、母親の過保護によって生じます。愛情を注がれ過ぎたために起きます。
「特別な子供」扱いすることで、「私は特別な人間なんだ」と思い込んでるのです。
厚顔無恥、誇大、顕示欲の強さなどがこのタイプの特徴です。

もう一つはこれと全く逆で、過剰警戒タイプです。
小さな頃から親の愛情を受けなかったため、褒められずに育ったために、
「自分は本当はもっとすごいんだ」と空想して、傷付いた自尊心を取り戻そうとするタイプです。
傷付きやすさや、過敏性が強く密かな自己愛を持っているのが特徴です。
このタイプはアメリカで多いとされています。
共通しているのは「自分は特別だ」と思っていることです。
また、「独特で」「完璧な」「才能がある」と自分を表現し、「普通の人には理解できない」と感じているようです

<診断基準>
 次の9つの基準のうち、5つ以上が当てはまります

1.自分は特別重要な人間だと考えている。
2.限りない成功、権力、才気、美しさ、理想的な愛の空想にとりつかれている。
  たとえば、自分は才能にあふれているから、どんな成功も思いのままだし、
  素晴らしい相手と素晴らしい恋愛ができるなどと思い込んでいる。
3.自分は特別であって独特なのだから、
  同じように特別な人たちや地位の高い人たちにしか理解されないし、
  そういう人たちと関係があるべきだと信じている。
4.過度な賞賛を要求する。
5.特権意識をもっている。自分には特別に有利なはからいがあって当然だと思い込んでいる。
6.自分の目的を果たすために、いいように他人を利用する。
7.共感する力に欠けている。つまり他人の感情や欲求が理解できず、認めようともしない。
8.しばしば嫉妬する。または、他人が自分に嫉妬していると思い込んでいる。
9.尊大で傲慢な行動や態度がみられる。


近年、子ども達の間で
「オレ天才」「オレが神」「わたしかわいい」など
自分を賞賛する言葉が日常的に使われるようになっていて
その元は多分漫画か何かで、当然冗談で使われ始めたものだと思うのだが
いつの間にか本気でそのようなことを思い、口にするケースが増えていることを知り
これは由々しき事態ではないかと不安になっている
そして、この『自己愛性人格障害』の問題はまさに「オレ天才」の世界であり
これが昨日の『新型うつ病』の問題ともリンクしているようだ

『自己愛性人格障害』の特徴については検索すればいくらでも出てくるが
上記の診断基準が一般的で
他にも(内容はほとんど似ているが)以下のようなものもある


・御都合主義的な白昼夢に耽る。
・自分のことにしか関心がない。
・高慢で横柄な態度。
・特別な人間であると思っている。
・自分は特別な人間にしか理解されないと思っている。
・冷淡で、他人を利用しようとする。
・批判に対して過剰に反応する。
・虚栄心から、嘘をつきやすい。
・有名人の追っかけ。
・宗教の熱烈な信者。


わたしとしてはここで興味深いのは一番最後の項目だ
「オレが神」と思っている人がなぜ宗教に熱心になるかというと
こういう人は根本的に”神さま=自分に都合よく働いてくれる存在”と思っていて
素晴らしい自分に神の力が加われば最強というわけだ
また、これとは反対に
”誰もが崇める偉大な神という素晴らしい存在に奉仕している私も素晴らしい特別な存在だ”
というのもあるらしい
この感覚は「有名人の追っかけ」にも共通している

だが、自己愛の人も心の奥底までおめでたくいられるのではなく
自分が期待するほどの結果が出ない現実に突き当たると心が不安定になる
優越感に浸る人の裏側には必ず劣等感が潜んでいて
それは普段は意識しないようにしているけれど(絶対認めたくないので)
自然とわきおこる感情はおさえようもなく
そういう意味では本当に神の助けを欲しているとも言えるだろう
ただ、残念ながら、彼らには悔い改めの意識がないので
同じところで事態は常に堂々巡りをしている

このたび引用させてもらった参考サイトの同じページには
自己愛性人格障害の他にもさまざまな人格障害について説明が載っているが
その中ではっきり”その原因は母親の過保護と父親の不在です”と記されているのは自己愛だけだ
多分世間では
責任の所在が母親であると断言するのは非常に厳しいという見方がなされるであろうにも関わらず
自己愛性人格障害について取りあげたサイトには皆同様の原因が記されているのは
それほど研究データの傾向がはっきりしているということなのだろう

生まれつきではなく、育つ過程において起こる人格障害は
それが発症することも、更に症状を助長させることも、人の関わりが原因ということになる
つまりは、周りがイエスマンになり、気を使ってちやほやする環境が最も悪く
自己愛の人に振り回されて悩む被害者の立場であっても
相手に同調してしまえば、更に相手の症状を悪くする手伝いをしているようなものなのだ
これはとても理不尽な話ではあるが、冷静に考えなくてはならない重要ポイントだと思う

特に自分に自信のないタイプの人ほど、自己愛のターゲットになりやすく
関わり方を間違えると泥沼が待っている
こういう人は、自分ひとりで悩むと自分が悪いと結論付けてしまうので
必ず誰かに相談することをお勧めしたい

         
*****

今までになく、大きく育ったニコチアナ”ライムグリーン”
きっと根の状態が良いのだろう
人がすくすく育つためにも心根が大切
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(2008.8.11.記)


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