青春讃歌 6〜金欠という悩みと幸い


娘の高校での一連の行事が落ち着いてから一週間
当初本人は呆然として、何かぬけがらのようになっていたが
いつまでもボーっとはしていられない
時はすでに6月末
7月にはいれば定期試験がある一方で
ホテルが夏の繁忙期になり、アルバイトも忙しくなる
8月末には高校生独唱コンクールもあるし
その前日には高校のオープンスクールで中学生を前に歌うことになっているらしい
ひとつの山を越えればまた次の山と、青春の日々は休む間もなく進んで行く

地元のリゾートホテルでシーツ交換のアルバイトを始めてからまる一年
時給が高いことから就業希望者は多くても
仕事がきつくてなかなか長続きがしない職種ながら
それでも娘がここをやめようとしないのは
何より少しでも働いていないと、夢や目標が実現しないからだ
先月ははじめて音大の先生のレッスンを受けに行ったが
そのレッスン費用は一回が6千円ほどかかる
これでも中高生対象で格安なのだけれど、負担感はかなりあるし
他にも、映画にも行きたいし本も欲しいし・・と
やりたいことがたくさんあるだけ資金も必要だ
このように、何かするには常にお金の問題がついてまわる
青春時代は多かれ少なかれ金欠病と隣り合わせであり
(そのまま一生この病気と付き合う場合もあるわけだが^^;)
金欠状態と上手く付き合う方法を模索するのも青春時代の課題だろう

先日、娘が久しぶりに押入れの掃除をしていたら“懐かしいもの”が出てきた
赤字で『数学特講』と題されたそのプリント群は
娘が中学生の時に、息子が家庭教師代わりで勉強を教えていた時の手作り教材だ
この頃はじめて息子は、自分の働きによって収入を得ることになったが
ケチな母親が提示した時給250円で
彼は週2回、2時間ずつ勉強を教えていたのだった
その教え方は厳しくて娘は辟易していたけれど
今その時のことを懐かしそうに振り返りながら
「あの時教えてもらったおかげで何とか成績が維持できたよね」と言う
その後の彼の人生で、これほどの薄給で雇われることは多分ないだろうから
(時給250円では最低賃金法に違反するし)
あれは貴重な経験になったと思う

地元の公立中学から、広島市内の私立高校へ進学した息子は
それまでとは違った環境におかれ、そこで金銭感覚の異なる人々とも出会った
同じ高校生でも、その育った環境によって金欠状態には大きな格差がある
ケタ違いのお小づかいをもらっている人もあれば
ない中でどうやってやりくりするのかばかりに頭をめぐらせている人もある
最近しみじみ息子は言うのだ
「最近の小学生はすごくお金もってるよね〜、カードとかどんどん束で買っていくし
こっちの時代にはカード一枚買うのでも大変だったのに」
バイト先のコンビニで、小学生がたくさんのお金を使うのを見て
そんなにお金を使う習慣がついていたら将来大変だろうと思うらしい
この辺の感覚はすっかり大人だ

人一倍好奇心旺盛で
常にやってみたいことや欲しいものがたくさんある息子にとって
今思えば、あの高校時代は随分不自由な思いをしたに違いない
何不自由のない人と自分を比べることもあっただろうし
当時彼の頭の中は、どうやって資金を調達するのかとの課題で占められていて
それでも安易な道に走ったり、間違いを犯すことがなかったのは良かった
親にとって一番心配なのはここの部分だ
青春時代は色々と迷う時代であり、ふと悪い道へ引きずられていくこともある
でも、結局人生は真っ当に生きた人が一番幸せなのだ
とりあえず普通に真面目に働いてお金を得る
そうすれば誰にも迷惑をかけないし、自分も安心していられる
そう考えて息子も一度はアルバイトをしたいと申し出たが
残念ながら彼が高校生の間(正確には大学合格まで)は親はアルバイトをOKしなかった

昨年、娘がアルバイトをはじめた時、息子は
「こっちの時にはダメって言ったのに」と恨めしそうに言ったが
息子と娘では事情が全然違ったのだ
息子は、勉強に重点を置く目的で私立高校に入ったが
娘は音楽に重点を置く目的で公立高校に入った
限られた時間の中で、目標はたくさん設定できない
娘は音楽の勉強(あるいはそれに関わること)のために働くことが必要だが
息子は勉強時間を確保するためにはアルバイトをするわけにはいかなかった
それでも、若い時には無理でも何でもできてしまいそうな気がしていたわけで
その辺が青春時代の「青い」ところなのだ

息子は、小学生時代に中学受験を望んだものの、わたしがOKしなかったものだから
それ以来リベンジのチャンスをねらって勉強に力を入れるようになった
息子自身「あの頃はなにか偉くなりたいと思っていたんだろうね」と語るように
小中高と、まわりにはいつも優秀な友達がいて
彼らに負けたくないとも思っていたのだろう
そんな勉強中心の彼の高校生活は、娘のように外観的に楽しそうなものではなかったが
それでも彼はその環境を十分楽しんでいたように思える
文化祭では3年間クラスの催し物の中心メンバーとなって働き
短期間で集中して楽しむ行事も色々あった
そんな中、悩みといえばいつもお金がらみの問題で
それも大学合格が決まってすぐにアルバイトをはじめてからは少しずつ解消していった

現在彼は往復3時間以上かけて大学に通いながら
地元のコンビニで月100時間前後働いている
試験の前も、レポート提出期限が迫っていても、バイトは休まない
今は高校時代に比べて学校に拘束される時間が少なくなっているため
自分で時間のやりくりがし易くなっているし
若い時だからこそ体力も続くのだろう
おかげで高校時代には夢でしかなかったことも今は色々実現し
今年の春はパソコンのカスタマイズにもハマった
computer2009608-1.jpg

パソコンショップに足しげく通いながら中古部品を手に入れマシンを改造する
こうしたことも、今は単に趣味に過ぎないが
将来的には必要なことになるかもしれない
また、この夏休みには四輪の中型免許も取りたいと思っているようだ
(わたしの時代の運転免許には自動的に中型免許までついてきたのが今は違うとのこと)
別に中型免許などなくてもほとんどの人は不自由はないけれど
息子は大学に通うようになってから毎日乗るバスの運転手さんの技術に惚れ込んでいて
いつか自分もバスを運転してみたいのだという
免許取得の件については本当に実現するかどうかはさておいて
こうして夢や希望を思い描きながら日々を過ごすのは楽しい

大学も3年生になり、年が明ければ就職か進学かも決めなくてはならないが
入学時には100パーセント大学院へ進学すると決めていたものの
今は早く働きたいとも考えているようだ
金欠の悩み〜働く厳しさと同時に生まれる楽しみを経験しつつ
20歳の息子の青春はまだしばらく続く


(2009.6.28.記)



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