音楽語り 5〜夜想曲 Nocturne


1980年
大学生になったわたしが聴いていた音楽は
70年代の終わり頃から聴き始めたフュージョン(別名クロスオーバー)と
クラッシックが中心で
ロックからは距離を置くようになっていた
また、新しい環境では特に音楽を語る友人もなく
わたし自身もそういう必要性を感じてはいなかった

「フュージョン」とは、ジャズとロックを融合させた音楽で
ジャズ好きの人からは、商業的と批判され
ロック好きの人からは、技巧にこだわりすぎとされる傾向にもあったが
わたしはアル・ディ・メオラの弾く超絶早弾きギターに惚れ込んでいて
あの頃コンサートに行く予定だったのに、急遽行けなくなった事が非常に残念だった

1984年、大学卒業と同時に結婚してからは
しばらく自ら進んで音楽を聴くこともなくなったが
大学生の頃から、教会の結婚式の歌を担当するようになり
結婚後は、東京の神学校在籍時代にも
結婚式で2度ばかり先導者(新郎新婦に先立って歩く独唱担当者)を務めた
(この時はじめて式典用に黒のロングスカートを購入する)
こうして
昔のように色々な音楽を聴く機会は減っていったが
「歌う人である自分」は確実に戻ってきた

さて
夫と結婚すると決まった時には、お互いのことはほとんど知らなくて
これから一体どうなるのだろうかと思ったけれど
はじめて結婚準備のための買い物に一緒に出かけた際
夫がカーステレオでかけていた曲がクラッシックをジャズ調にアレンジしたもので
それがとても心地よく
ああ、こういう音楽が好きな人なんだなと、何だかホッとしたのを覚えている

夫が好きな曲はだいたいクラッシックが中心で
中でも、フルオーケストラの鳴らすダイナミックな交響曲よりも
モーツアルトの協奏曲に代表されるような、明るく穏やかなものが多い
そして、わたしが夫の趣味の中で一番気に入ったのはオルゴール音楽だった
オルゴールの持つ、優しくて不思議な音色は心の奥に響き
なじみの曲が別物のように聞える
それまで小さな箱のオルゴールしか知らなかったわたしは
楽器としてのオルゴールの音色にふれて非常に感激すると共に
夫がロマンチストであることを確信した

音楽の趣味を知ると、その人のイメージがだいたいわかる
そういう意味では、夫で見ればわたしは「コイツは危険!」かもしれない(笑)
いや、わたしは単に守備範囲が広い雑食系なだけで
穏やかで美しい音色は昔から大好きなのだ
何と言っても原点は唱歌と伝統歌(トラッド)なのだから

また、夫が歌が上手いことは礼拝で聞いて知っていたが
小学生の頃はボーイソプラノで、合唱団に入るよう勧められたことや
色んな楽器(トランペットやフルート等)にも親しむ人であることを知ると
ますます親近感がわいた
更には、その楽器を管理する時の几帳面さに驚き
楽器へのこだわりと深い愛着とを感じるうちに
夫はわたしよりもずっと音楽に近い人なのだろうと思うようになった

その後、子どもたちが生まれ
彼らも夫の好きな音楽を一緒に聴きながら、日常的に音楽に親しむ人に育っていくが
その趣味は、一部は親と共有しつつ、やがて各々個性を発揮するようになる



(2009.2.5.記)


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