青春讃歌 21〜美への憧れその2


スカートをはこうとしなかった中学時代から一転
今やフリルのワンピースも好んで着るようになった娘には
服やメイクの他にもうひとつ
見えないお洒落を楽しむ願望があった
それは「香水」への憧れだ
このタイミングで娘が香水のことを口にしたのは
かつて香水大好き少女だったわたしとしても興味深い

「柑橘系の香りがふわぁ〜っと香るのがいいよね」と語る娘
そうそう、少女時代には爽やかな柑橘系が一番いい
そういえば、わたしが高校時代お世話になった数学のお爺さん先生は
いつもきちっとスーツを着用し、柑橘系のコロンがかすかに香って
女子高で人気だったなあ〜^^

高校時代は香水の香りと言っても柑橘系しか知らなかったわたしだが
ある事をきっかけに
香水というものについてもっと知りたいと思うようになる
それは今から30年前、大学に入ったばかりの頃で
高校時代の友人と旅行で東京へ行った時のことだ

旅先で泊まったのはホテルではなく友人のお姉さん(大学4年生)の下宿先
お姉さんとはその時が初対面だったが
その方があまりに美しく知的で素敵な女性なのに驚いた上
そこへ遊びに来ていたドイツ人の友達と一緒にパンケーキを焼き
それにアボカドとカッテージチーズをのせて食べるという
田舎者のわたしにとっては初めて見るお料理のおもてなしを受けて
もうすっかり嬉しくなってしまったのを覚えている
ドイツ人の友達もとっても気さくな人で
お姉さんの通訳で楽しくお話もできたし
あれは今でも心に残る青春時代の楽しい思い出のひとつだ

広島に帰ってから、そこで随分お世話になったことを母に話すと
「何かお礼をしたいけど何がいいかな?」
という話になった
才色兼備のお姉さんに喜ばれそうなものってなんだろう?
わたしにはさっぱり見当がつかないでいると母が言った
「そんなに素敵な人ならきっと香水を使っているはず
愛用の香水は何かを友達に聞いてきて」

で、早速わたしが友人にお姉さんの愛用香水を尋ねると
「シャネルの19番よ」という

ほぉ〜・・・シャネルって、あの”シャネルの5番”のシャネルかな??
とまあ、当時一応そういう名の香水があるのは知っていたわたし
でもそれが一体どんな香りなのかも知らないし、19番なんてさらさらわからないけれど
母にその名を告げると
後日、母はデパートへ行き
シャネルの19番の石けんとオードトワレのミニボトルのセットを
お姉さんの下宿先に送ってきたという
その贈り物はお姉さんにとっても喜んでいただけて嬉しかったが
何より香水なんて使わない母がそんな洒落たことを思いついたことに
わたしは今でも感心している
(母自身はそんなことがあったのも覚えていないらしいけど)

それ以来、わたしは
素敵なお姉さんお気に入りのシャネルの19番がどんな香りなのかが
とても気になるようになった
気になることは実際に確かめに行くに限る
大学生になったばかりで、まだお化粧もしたことがない当時のわたしには
デパートの化粧品コーナーに行くのは非常に勇気がいったが
実際に見るシャネルの19番は見た目も美しい緑色で
香りは、想像外に爽やか
そして優しい花の香りにとても気品があるように思えた
それはやっぱりあのお姉さんにふさわしいもの
香りもお値段も、わたしには遠い憧れのものだった
chanel19.jpg

それからのわたしは
たびたびデパートに出没しては
色んな香水をかぎまくるようになる
店員さんは、すっぴんのわたしに盛んに化粧品を勧めてくれたが
その頃のわたしはすっかり香りのとりこになり
この地味な顔立ちのわたしがメイクでせっせと化けることよりも
目に見えない香りを身にまとうことへの憧れから
どこかに自分に似合う香りがないか探すことに夢中になっていた

やがてあちこちで香水のサンプルを収集するのが趣味となり
そして出会ったのが、ニナリッチの”レールデュタン(時の流れ)”
いや、これってすごく甘い香りで
今思えば当時のわたしにはあまりに背伸びしすぎというか
全然似合っていなかったと思うが
多分、こんな香りが似合う女になりたいと思ったのだろう
20歳を過ぎた頃だっただろうか
母からメイク道具もそろえてもらった頃
ついにレールデュタンのトワレを手に入れたのだった

その頃、わたしの友人にも香水好きがいた
彼女が使っていたのはクリスチャン・ディオールの”ディオリッシモ”
ところが、しばらくして彼女はそれを使わなくなった
その理由はこうだ
「この前コレつけてたらね、誰かキンチョールまいた?って言われたのよ〜(泣」
あ〜そういえばそんな感じかも?!、、、^^;

つい最近、ネットで
スズランの香りはキンチョールのニオイに似ていると書かれているのを見つけたが
どうやらディオリッシモには実際にスズランの香りが使われているらしい
有名な香水がどういう精油の組み合わせでできているのかは
ちゃんと情報が公開されていて
そこにスズランの香りが入っていた

一方、わたしの好きだったレールデュタンにはクチナシの香りが入っている
さすが甘いはずだ・・
そして、あのシャネルの19番にはアイリスとスイセンの香り
あ〜なんかとっても爽やかそう〜〜

しかし
自分の香りにしようとしたレールデュタンも
結婚後はもう新たに購入することはなかった
”レールデュタン(時の流れ)”の名のごとく
香水にはまっていた若い日々は遠く過ぎ去り
今はどんな香りだったか、とにかく甘かったという以外はっきり思い出せない
果たしてわたしは本当にあの香りが好きだったのか・・?

若い頃には、メイクは別人に化けるためのものだと思っていて
それと同様に香水もまた違った自分になるための道具のような気がしていたが
本当は、自分らしさを良い形に表現するためのものと考えていれば
もっと違うものを選んでいたように思う
そう、娘の欲しがっている柑橘系の香りのような
ああいう感じがちょうど良かったのかも、、

先日、娘と一緒に今時の香水の匂いをかぎに行ってきたが
甘すぎたり、おばさんっぽい感じの香りが多くて
お値段も高いし、娘が気に入るようなものはなかった
もっと清楚で、ちょっと神秘的な奥の深い香りはないものか・・?
レモンやライムの精油も単品では単調すぎる
ならば自分で色々調香して
娘の好みに近い香水が作ってみたくなった
というわけで、近々香水作りにもチャレンジする予定〜



(2010.1.28.記)



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