青春讃歌第二幕 5〜若さの力


毎朝5時に起き
オール冷凍食品のお弁当を作ることが息子の日課になって3ヶ月目
毎週日曜日は近所のスーパーで冷凍食品が半額なので
こ れを一週間分買いだめするのも習慣になった
ただ、半額になっても冷凍食品てやっぱり高い
いつも一緒にお昼を食べている“弁当男子”計3人 は
どうすればもっと安くお手軽に弁当を作れるか
食べながら常に今後の弁当計画を練っているようだ

それにしても、節約目的 の弁当つくりなら
せっかく自宅にいるのだから前夜のおかず等を入れたら安くつくのに
この辺はどうも主婦とは感覚が違っているようで
あ くまでも自分なりのこだわりがあるらしい
かといって、朝早く出るので調理しているような暇はないし
まあそのうちあきるまではオール冷凍食 品弁当かなあと思っていたら
先週から息子に変化が起きてきた

何の変化かといえば体調の問題だ
最初は脱水症状と思われる頭 痛から始まり
翌日からは大きな水筒に塩入り麦茶を持参するようになったものの
何か調子が思わしくないまま、だらだらと週末を迎えた
そ して、土曜日の夜になって寒気がすると言い出したかとおもえば
翌朝には39.6度の発熱
常備している市販の風邪薬を飲んでもいっこうに熱 が下がらず
これはインフルエンザか?ということで午後から休日急患診療所へ、、
そこで注射をしてもらって少し楽になったが
お腹の 調子も悪くて夜眠れない
そして月曜日には近所の医院へ行って血液検査を受け
結局原因は“疲労による免疫力の低下”と診断された

か くして高熱と腹痛でえらい目にあった息子は
節約生活よりも、少しゆっくり生活するよう考え直すことになる
それでなくても気候不順で体調を 崩しがちなところを
息子自身「今までこんなに勉強したことはなかった」というくらい
もしかすると受験時代よりまじめに勉強しているら しく
想像以上にエネルギーも消耗していたのだろう
だが、何より一番の問題は片道60キロ近い距離の移動にある
一般道路で行くと朝 は渋滞で2時間半もかかるのだから
これを高速道路を利用することで時間の短縮を図ったほうが賢明だ
(全行程高速道路を使えば1時間足らず で着く)
そうすれば朝もゆっくり食事ができるし
もっと自宅通学のメリットを生かさないともったいないと以前から親は思っていたが
そ の点は何でも自分でやってみないと納得しないお年頃
とりあえず今週はお弁当つくりもお休みし
わたしが作ったおむすびを持って行っている

こ の春からバイトもやめて奨学金頼みの生活になったため
自分なりにあれこれ資金繰りにがんばってみてはいるけれど
もともとあまり身体が丈夫 な方じゃないので
やっぱり無理は続かないものだ
いや、今回の件は、早めにこうなって良かったなと思う
この先どんどん暑くなってく ると
夏が非常に苦手な息子はもっと重症でダウンしたかもしれない

わたしが学生だった頃も現在も、大学生といえば
親に頼っ て優雅な生活をしている人々が結構いるような
一部に偏見交じりのイメージもあるが
この不況の時代にあって
そんな優雅な人々がたく さんいるとは思えない
実際息子の周りはみんな奨学金とアルバイトで生活していて
かといって自分のやりたいことや欲しいものもあきらめたく ないので
何とか生活も趣味も両立させようと無謀な試みもやっているようだ
この年頃は、若さゆえにある程度の無理もきくし
自分の限 界を知らない分しばしば無茶もする
こうして色々ぶつかりながら過ごす青春時代はキケンとも隣り合わせ
息子も本当は趣味と実益を兼ねてバイ ク通学をもくろんでいたが
さすがに今回の件で計画はお流れとなった
確かにバイクは車に比べて車体も維持費も安く
渋滞の間をすり抜 けていける便利さはあるけれど
現実は計算どおりに行かないものだし
何より親としてはこの長距離をバイクで通学させるのは心配だ

そんなこんなで
昔も今も若者のやるこ とは似たり寄ったりだと思う一方
明らかにわたしの若かった時代とは違う面もある
バブル崩壊後の不況の中で育った20代前半の彼らにとって
親 の世代が知る好景気の夢は遠く
昔の若者にとってステータスであった車やブランド物も
今の若者は簡単に飛びつかなくなった
それを世 間は『若者の○○離れ』と言って
彼らがまるで何も興味がない世代かのように言うけれど
それについて息子は常々不満げに言うのだ
「今 の若者は単純にお金がないんだよ。あれば車だってなんだっていくらでも買うわ」
彼らにとっては、
せいぜいIT機器に投資するのが精一杯で
今後就職しても200万も300万もする車のローンなんて
そう簡単には考えられない
だが一方で、若い時ほどお金があればあるだけ使ってしま いたいもの
そんな購買欲はちゃんと生きているから
現在の奨学金頼みの借金生活でも
なおやりくりして自分にとっての夢を追いかけようとしているわけだ
それを単純にバカみたいだとわたしは思わない
というのも、そういう思考や行動が人間の幅を広げ
その人の魅力につながることを 経験的に知っているから

昔と違っていつ職を失うかもしれないこの不安定なご時世
世間のステータスではなく、自分の価値観で堅実に 生きている今の若者世代は
現実を良く見ており、かなり冷静だと思う
それは彼らがインターネット世代であり
世間やマスコミの価値観 をそのまま鵜呑みにしないで
事の真偽も、物の良し悪しも、自分で情報を集めて判断するようになったからだろう
彼らは買い物をする際にも、 見せかけのコマーシャルなど信じていない
彼らが信用するのは、企業と利害関係のない、実際に使った一般人による“クチコミ情報”だ

バ ブル期の始まりとされる1985年にはわたしはすでに結婚していて
しかも家は教会だから
景気が良いといってもそれがどういうことなのか実 感はなかったが
当時のテレビ番組で、やたらとラグジュアリがどうのと横文字で高級感を演出し
人々の目を豪華なものへと向けさせる風潮が あったのは記憶している
もし、当時の番組を今放映したなら
若者たちは「どこの国の話?」と
憧れるどころか自分には縁遠い世界のこ とのように思うだろう
いや、その前に彼らはすでに『テレビ離れ』しているわけだが、、

昔から、無茶や無謀は若さの証といわれる反面
懐かしむ過去を持たない若者世代は
色んな意味で大人世代よりも冷静に世情を見、未来に向かって歩んでいる
わたしが若かった頃にも“大人の考えは古い”と感じることがよくあったが
この年になってみて、自分の過去の固定観念には
もう使い物にならないものもたくさんあるなと思う
大人が不況不況と嘆く中
それでも懸命に就職活動をして未来を切り開こうとしている若者たちの姿は
物質的に豊かな時代にはもう死語になってしまったとも思える”ハングリー精神”
という言葉を思い起こさせる

“お金はないけど夢だけはある”
かつて息子が電車で出会った海軍兵学校出身のお年寄りたちが
“あの敗戦後の何もなかった時代でも
不思議と何でもできる気がして夢と希望にあふれていた“
と、語ってくれた言葉を思い出しながら
若さの持 つ力は、いつの時代も変わらないのだとしみじみ思う

*****

今年初めて挑戦する「高糖度トマト」が色づき始めた
無 謀と思えるほどに極力水を控えて栽培し
通常よりも枝は細く実も小さめだが
これで本当に味がよければ大成功
さあ結果は如何に?




(2010.6.24.記)



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