青春賛歌第三幕 11〜思い出作り


教育実習も終わり
再び大学生活に戻った娘は
ある日ネットでおいしそうなお菓子と出会い
さっそく自分で作ってみることにした

フランスの修道院で作られていたという伝統のお菓子『カヌレ』は
1996年に日本でもブームになったらしいが
流行物にうといわたしは食べたことがなくて
一体どんなものなのか?と、娘が作るものに興味津々〜
材料は
牛乳/グラニュー糖/薄力粉/コーンスターチ/バター/ラム酒/全卵/卵黄/バニラビーンズ
カヌレ型はないのでとりあえずココット型を使ってみる
kanure2013703.jpg

レシピの写真では、もっと周りが黒く焦げているのだけど
そんなに焦がしたら苦くて食べられないんじゃないかと心配し
この程度の焼き色にとどめておいたら
う〜ん、、、ちょっと生っぽい感じかも?!
それでも味にうるさい夫が
「これは紅茶と一緒に食べると美味しいよ」というので
娘も気を取り直し
「今度はカヌレ型を買ってから作ってみる」「もっと焦がさないとね」
などと意気込んでいた

あれから2週間になるが
娘の口から「カヌレ」という言葉が出るヒマがないほどに
試験やコンサート等の準備で忙しく毎日が過ぎている
非常に暑い日が続いているけれど
娘自身はとても元気だ
好きな音楽に没頭しているこの瞬間こそが
彼女にとって生きていることを実感させてくれる時間なのだと
その様子を見ているとよくわかる

教育実習を終えて3週間ぶりに大学に帰ってみると
周りの同級生がすでに卒業を意識し
このまま音楽を続ける道を模索するのか
あっさり音楽をやめて全く別の道で行くのか
はっきり決められないまま悩んでいる人が少なくないことを目の当たりにした
娘自身は大学院へ進学すると決めているので
今週末行われる教員採用試験は受けないが
そこに向けてコツコツ準備をしている人たちもたくさんいるようだ
しかし広島県の音楽科教員の採用枠は中高で各2〜3名程度
正職員への道は遠い・・

音楽が好きな人にとって
音大で過ごす4年間は夢のようなひと時でもある
ほとんどの学生の本心は
”これからも音楽を続けたい”というものだけど
将来の生活設計に音楽を組み込むことは非常に難しいのが現実だ

娘とて
じゃあ大学院を出てどうするという先のあては何もない
本当に全く何もないのに
それでも音楽を何とか続けていこうとするのは
ここでやめたら自分が後悔することを知っているから・・

来月行われる、植物園での恒例の野外コンサートには
一年生の時から一緒に出演してきたメンバーで臨むが
その中で娘は、ジブリ映画〈紅の豚〉のエンディング曲でもある
『時には昔の話を』をソロで歌うことにしている
中年の男が青春時代をふり返る内容のこの曲は
いつかは歌いたいと思っていた歌だ

その3番の歌詞を以下に書いてみる

  
一枚残った写真をごらんよ
  ひげづらの男は君だね
  どこにいるのか今ではわからない
  友達もいく人かいるけど
  あの日のすべてが空しいものだと
  それは誰にも言えない
  今でも同じように見果てぬ夢を描いて
  走りつづけているよね どこかで



娘が歌うのを聞きながら
メンバーの一人がつぶやく
「やばい、、この曲聞いたら泣きそう、、」
彼女は卒業後、音楽と無縁の会社に就職することが決まっている
音楽を続けないからといって
この4年間が空しいものだとは決して言えないだろう
音楽を続ける者、離れる者、どちらにとっても
やがてすべては思い出に変わっていく
だからこそ余計に後悔しないよう今やれることを精一杯頑張って
そして楽しんで
良い思い出作りをしてほしいと思う


(2013.7.16.記)



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