無農薬無肥料栽培への道10〜完全無肥料ブロッコリー栽培完結編 (1月2日)
ブロッコリーの無肥料栽培と、2000倍液肥散布栽培の違いを見る実験についてのまとめ
<問題提起>
山の木々は誰が肥料を与えるわけでもないのに大きく育つ
そこでは堆肥化した落ち葉や動物の死骸が養分となり
更に土中の微生物層が豊かに整うことによって
植物の生育にちょうど必要なものが供給されるという
自然界の絶妙なバランスが存在している
それを庭や畑にも取り入れることができないだろうか
1.無肥料栽培のブロッコリーと
極薄い液肥を散布したブロッコリーそれぞれの生育の違いを見て
本当に必要な養分とはどの程度であるかだいたいの目安を探りたい
2.無肥料栽培にすると虫の害が少なくなるというのは本当だろうか
<実験方法>
同じ時期に買ってきたブロッコリーの苗を同じ大きさのコンテナで育て
両方の苗に、微生物層を整える目的で「ワイン酵母発酵液」を500倍希釈で週一回散布する
*ワイン酵母発酵液*
・・・ペットボトル8分目の米のとぎ汁にワイン100cc、砂糖大さじ2杯を入れて
一週間室温放置
無肥料株はこれと水だけで栽培し
もう一つの株は、更に2000倍希釈の液肥を週一回ずつ散布する
*液肥*
・・・NPK比10-10-10の化成肥料にワイン酵母発酵液を注いで
一週間以上放置したもの
<実験結果>
10月26日
この時点までワイン酵母発酵液しか散布していない2つの実験株は
虫食いもなく葉っぱはとてもきれいだった
11月3日
この日から比較実験スタート
葉っぱは青虫に食害されつつある(養分不足で弱っているのか?)
<2000倍希釈液肥> <無肥料>
11月19日
液肥散布3回目
ほぼ同じ頃に蕾が見えてきた
<2000倍希釈液肥> <無肥料>
ここまでは両者に大きな差は見られなかったが
これ以降ぐっと違いが出はじめる
12月14日
液肥散布7回目
<2000倍希釈液肥> <無肥料>
12月26日
液肥散布8回目
<2000倍希釈液肥> <無肥料>
1月2日
液肥散布9回目
<2000倍希釈液肥> <無肥料>
生長具合に明らかな差が確認できたので
今回の実験はここで終了する
なお、虫の食害については
2000倍液肥を散布した方がほとんど被害がなく
無肥料の方は観察最後の日にも寒い中で青虫の存在が確認された
<検証>
今回の実験により
完全無肥料よりも、ごく薄い液肥を散布した株の方が
生長も良く、虫の被害も少ないという結果が得られたが
では、”ごく薄い液肥”の養分は具体的にどの程度のものであるかを概算してみよう
使用した肥料はNPK比10-10-10の化成肥料だが
ここでは植物の生長に必須のチッソについてだけ計算してみることにする
NPK比10-10-10の固形肥料10グラムの中に含まれるチッソは1グラム
この固形肥料にはワイン酵母発酵液を注ぐため、実際のチッソはもっと薄まるわけだが
ここでは単純に固形肥料のチッソ分のまま計算すると
10グラムの肥料を2000倍希釈してできる液肥は20リットル
それを一株あたり平均1.5リットルずつ散布するとして
だいたい一株に与えられるチッソの量は0.075グラムになる
これが全部で9回施されたので9倍すると0.675グラムだが
液肥というものはそのほとんどが土を素通りしてコンテナの外へ流亡する
となると、一体このわずかなチッソのうちどのくらいが実際にブロッコリーに吸収されたのだろうか?
また、ワイン酵母発酵液の米のとぎ汁にもチッソ分があるとはいえ
これも500倍に薄めれば微々たる物となる
そもそもブロッコリー一株が育つために必要なチッソはいかほどなのだろう?
そこで『用土と肥料の選び方・使い方(農文協)』から基準値を引用してみよう
そこには、10リットルの土を用いたブロッコリーのコンテナ栽培において
元肥として、10-10-10化成肥料13グラム
追肥として、8-8-8化成肥料6グラムを3回施すと記されているが
これをチッソ量だけ計算すれば約2.7グラムとなる
これは今回の実験株に施した4倍の量だ
しかもこちらは固形肥料
散水ごとに少しずつ溶けて利用されれば
液肥でどんどん流れてしまうよりもチッソの流亡率は少ないだろう
となれば、その差は単に4倍どころではない
”山の木々は誰が肥料を与えるわけでもないのに大きく育つ”
その自然の仕組みを上手く取り入れるなら
植物に与える肥料は、常識的な量よりもぐっと少なくてすみそうだ
いや、少なくしなければ
チッソ過多では植物は軟弱になり、病虫害を招くというのも農業の常識
かといって、何も与えなくては生長も悪く、虫も寄ってくる
では実際に何をどのくらい施せばいいのか?
今回の実験で、だいたいの大筋がつかめてきたので
今年はこのデータをもとに栽培管理を進めていこうと思う
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